相続税対策として、保有している自社株式を後継者の予定の長男に譲渡等・贈与等(以下、譲渡等)を考えています。但し、自分の一定の支配権は残したいと考えています。

支配権を保持しつつ、後継者に株式を譲渡等する方法としては以下の方法等が考えられます。

① 発行済株式の2/3を保持し、残りについて後継者に譲渡等する。

発行済株式の1/3未満までの譲渡等であれば、株主総会特別決議事項について決定権を保持できますが、1/3未満までしか譲渡等できないため相続税対策としては限定的となります。

② 発行済株式の過半数を保持し、残りについて後継者に譲渡等する。

発行済株式の1/2未満までの譲渡等であれば、株主総会普通決議事項について決定権を保持できますが、1/2未満までしか譲渡等できないため相続税対策としては限定的となります。

③ 拒否権付種類株式(いわゆる黄金株)を所有し、その他の普通株式について後継者に譲渡等する。

拒否権付種類株式とは、予め定めた一定の事項(例えば、取締役等の選解任に関する事項等)について特定の株主に拒否権を付与する株式であり、黄金株とも言われています。この拒否権付種類株式の相続税評価額は普通株式と同様に評価するとされていますので、例えば、拒否権付種類株式を1株だけ保有し、残りの普通株式を後継者に譲渡等することは相続税対策として有効と言えます。

④ 普通株式を所有し、無議決権種類株式を後継者に譲渡等する。

無議決権種類株式とは、その名の通り議決権をもたない株式です。この無議決権種類株式の相続税評価額は原則として、議決権の有無を考慮せずに評価する、つまり普通株式と同様に評価する(相続人の選択により、その価額に5%を乗じて計算した金額を控除した金額により評価するとともに、当該控除した金額を普通株式の価額に加算して申告することは一定の条件を前提に可能。)とされていますので、例えば、普通株式を1株だけ保有し、残りの無議決権種類株式を後継者に譲渡等することは、相続税対策として有効と言えます。

⑤ 取締役等選任権付種類株式を所有し、その他の普通株式について後継者に譲渡等する。

取締役等選任権付種類株式とは、その名の通り取締役等を選任する権限を付与された株式です。この方法によれば実質支配権を保持することは可能ですが、取締役等選任権付種類株式の相続税評価額の評価方法については明確になっていませんので留意が必要です。

なお、上記③~⑤で挙げている種類株式(拒否権付種類株式、無議決権種類株式、取締役等選任権付種類株式)を追加する場合には種類株式の内容及び発行可能種類株式総数について定款の変更をしなければなりませんので、株主総会の特別決議が必要となります。

2014年8月29日