調査時のポイント
Ⅰ 対策と対応
〔1〕事前対策
①金庫・机の中に不要物がないか。他社等(関係会社、従業員親睦会)のもの、
従業員、代表者の私物は必ず持って帰る。あるいは、不要物については消却する。
調査官が金庫・机・パソコンのなかを直接見るケースがままあります。
(特調部門の調査時では、かならずあると思ってください。)
②証憑資料に付箋等が貼っているのは、剥がしておく。
③契約書等について、不要なものはおいておかない。
④中途の決算の過程と最終決算の数値に差異がある場合は、
その差異につき説明がつくようにしておく。
(あるいは中途決算の予測資料を廃棄しておく)
⑤担当者のメモの類については、誤解を招く恐れがある場合があるので、
どうしても必要なもの以外は会社においておかない。
⑥また、最近の傾向として、担当者のパソコンを開けてくださいということも、よくあります。
不要なデータ、メール、メモも事前に整理しておいてください。
⑦会社のホームページは事前に見られていると思ってください。
⑧3期比較表により科目の増減の内容を把握しておく。
⑨懸案事項、異常取引については、事前に説明の要点を整理しておく。
⑩税務署サイドが見る資料は、会社の内部資料では、伝票、元帳より、メモ、
社内のワーキングシート(ノート)稟議書などの第一次資料であり、外部資料としては、
請求書、納品書などの明細をチェックします。
それらについて、不用意な文言がないかどうか、事前に点検してください
⑪前回の税務調査における否認事項について、同様の問題点はないか。
〔2〕 当日の対応
①調査の初日の朝、社長(担当役員)が応対すること。
会社の事業内容、商品、取引先、組織、関係会社など、調査官の質問に応じて説明する。
経理責任者は、会計処理の流れを説明する。
②丁寧に対応する。
③聞かれたことにだけ回答する。
聞かれてもいないことを「追加的」に説明するといったことはしない。
④どんな場合であっても嘘はつかない。
覚えていないことは、その旨を、調べる必要のあるときは、調べてから回答するという。
⑤資料を要求されたときは、できればその資料だけをとりだして呈示する。
ファイルごと見せない。調査の現場では、調査官からファイルごともってきてくださいと
いわれるケースもあるが、その場合は臨機応変に対応する。
⑥調査官がコピーを要求したときは、内容に応じて2部取り、1部を会社においておく。
⑦調査官の指摘に納得できないときは、必ず、その旨を主張しておくこと。
⑧全社的(特に営業担当者は)に、調査官から聞かれたことと自分の答えたことのメモを残すように。
また、経理担当者は、営業マンのヒヤリングの際には必ず立ち会うこと。
Ⅱ 項目別ポイント
〔1〕全般 以下のような資料から調査のポイントを絞りこみます。
①会社パンプレット、HPによる会社の全体の説明
②組織図
③予算・実績対比表
④稟議書、取締役会議事録の閲覧
⑤規程集
⑥調査対象会社が大会社等の子会社である場合、親会社の内部監査報告書、会計監査人の監査報告書
〔2〕売上
①会社の売上について受注から請求、入金に至るプロセスの説明
②受注請求のメモ、ワーキングノートについてすべて売上計上されているかどうか。
計上されていない場合は、その理由
③請求書の控え、入金時の領収書控えについて、すべて計上されているかどうか
④期末時点の期間帰属
⑤請求書の発行と引渡しの異なる取引につき④のカバーができているか
〔3〕仕入
①受注に伴う、発注から請求,支払に至るプロセスの説明
②社内の発注システム
③請求書,領収書はそろっているか
④原価管理はどうか(赤字取引はないか)
⑤売上との対応がすべてできているか。仕入のみ計上されている取引はないか。
⑥請求書の入手と引渡しの異なる取引につき期末時点の期間帰属のカバーができているか
〔4〕在庫
①棚卸は適正に行われているかどうか(棚卸表の確認)
②期末の仕掛工事はすべて計上されているか
③期末の評価額
④単価について、単に購入金額だけでなく附帯費用(引き取り運賃、乙仲費用等)を加えているか。
〔5〕役員報酬
①役員報酬限度枠の設定はあるか、超過していないか
②役員報酬の改訂について 総会決議等はなされているか
③親族役員について過大なものはないか
④役員の報酬は定期同額の要件を満たしているか
⑤出向者が役員となっている場合・・総会の報酬決議、出向契約書
⑥役員賞与はないか
⑦経済的利益について(社宅等)
〔6〕その他の人件費
①架空人件費はないか
②親族への給与について過大なものはないか
③決算賞与で未払計上分は損金要件をみたしているか
〔7〕経費
①私的経費(自動車、飲食、ゴルフ、旅行等)の計上はないか
②資産に計上すべきものを、経費処理していないか(修繕費、保険料)
③貸倒損失の妥当性、法的破綻の内容の整理
④他科目交際費はないか
⑤バックマージン的な費用の処理
⑥家賃の年払契約を行っている場合は該当の契約書
⑦期間帰属の妥当性
〔8〕源泉税
①年末調整の書類
②扶養控除申告書
③賃金台帳 タイムカード 他出勤簿 はそろっているか
④退職金 支給について「受給に関する申告書」はあるか。
また、役員の場合は、株主総会の決議の議事録はあるか。
⑤経済的利益は源泉の対象となっているか。永年勤続等
⑥自動車・バイク通勤者の非課税枠
⑦報酬についても源泉税対象としているか
⑧非居住者の使用料等について源泉の対象となるものはないか
〔9〕関係会社取引・役員との取引
①取引内容、価額が妥当か
②関係会社とのコンサル契約など、契約内容・金額が変更したにもかかわらず、
契約書の改訂がなされていないものはないか。
③社宅家賃
④代表者からの貸借について出所資金へのトレースができるか
⑤貸付金、借入金 について金利の清算をしているか
⑥寄付行為はないか
〔10〕減価償却資産
①耐用年数・償却月数・特別償却
②資産の除却損の計上・・除却の確認書類
〔11〕印紙税 ◎
①契約書ファイルを事前に点検しておく。
〔12〕消費税
①消費税の計算用のワーキングシートを用意する。
②課税売上割合、非課税仕入もチェック
③課税売上5億以上の会社
〔13〕総務関係の内容確認
①株主の変更
②代表取締役の変更
③本店の異動
〔14〕その他
①外貨建て取引の換算、外貨建て債権債務及び外貨預金の換算
②簿外資産の有無(多額の印紙・棚卸・現金 等)
③現金の実在性(期中・期末に現金が多額にある場合の実在性)
④特別損失(その内容・計上根拠)
⑤従業員親睦会名義で本来会社の収入とすべき取引を計上していることはないか。
Ⅲ 準備資料
1.会計関係
・会計伝票・元帳・各種補助簿・試算表
2.銀行関係
・当座照合表・通帳・総合振込依頼書
3.取引関係
・納品書・受領書・請求書・見積書・領収書・旅費精算書
4.給与関係
・源泉徴収簿・扶養控除申告書・退職所得の受給に関する申告書・各種保険関係の書類
5.棚卸関係
・棚卸原票・集計票・原価計算書・期末時価計算書
6.総務関係
・組織図・株主総会議事録・取締役会議事録・稟議書・諸規定類
・各種契約書(売上、仕入、賃貸、リース、借入、その他)
・監査報告書