使用者が支給する学資金の取扱い 

① そもそも学資金とはどういう定義ですか
昭和26年発遣の「所得税法に関する基本通達」(昭26直所1-1)41項に「学資金とは,学術又は技芸を習得するための資金として父兄その他の者から受けるものであって,かつ,その目的のために充てられるものをいうものとする」と定められています。すなわち,学術等の習得のために受ける資金であること,そして,その目的のために使用されるものであることが学資金とされました。
その後、学資金に関する取扱いの変遷はありますが、学資金の意義を直接明らかにした通達等はなく、この26年通達が現在においても妥当なものと言えます。

② 平成28年度の所得税法改正で非課税とされる学資金の範囲が拡大されました。
(1)課税対象学資金
学資に充てるため給付される金品のうち,給与その他対価の性質を有するものは非課税の対象から除かれています。28年改正法により給与所得を有する者がその使用者から通常の給与に加算して受けるものであって,次に掲げるもの以外のものは,給与その他対価の性質を有するものから除外することとされました( 所法9 ①十五)。
イ 法人である使用者からその法人の役員に対して給付されるもの
ロ 法人である使用者からその法人の使用人(役員を含みます。)の配偶者その他のその使用人と特別の関係がある者に対して給付されるもの
ハ 個人事業主からその個人事業主の営む事業に従事するその個人の配偶者その他の親族(その個人と生計を一にする者を除きます。)に対して給付されるもの
ニ 個人事業主からその個人事業主の使用人の配偶者その他のその使用人と特別の関係がある者(その個人と生計を一にするその個人の配偶者その他の親族を除きます。)に対して給付されるもの

(2)非課税対象の学資金
上記(1)により使用人の配偶者や親族等が給付を受けるものは課税対象とされます。一方,使用人自身が給付を受けるものは,上記(1)のイからニまでに掲げるものに該当しませんので,非課税とされます。
また,28年改正通達前の9-16では高校までの学資金に限って課税されませんでしたが,改正後は大学への修学等費用であっても非課税とされることになります。ただし,給与所得を有する者がその使用者から受けるもので非課税とされるのは,通常の給与に加算して受けるものに限られます (注) から,通常の給与に代えて給付されるものは非課税とはなりません( 所基通9-14 )。

(注) 通常の給与に代えて支給されるものであることを非課税の要件としているものには,通勤手当や在勤手当( 所法9 ①五,七),深夜勤務者の夜食代(昭59直法6-5)があります。

③ 使用人等に技術の習得等をさせるために支給する金品等の取扱い
学資金とは別に、従前より使用人等に技術の習得等をさせるために支給する金品等については非課税とされています。
使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき,役員又は使用人に当該役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ,又は免許若しくは資格を取得させるための研修会,講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については,これらの費用として適正なものに限り,課税しなくて差し支えない。(所得税基本通達36-29の2)
この場合の技術又は知識の範囲は,その習得する使用人等の職務と直接結びつくものに限られ,一般教養的な知識等の習得は含まないものと解されます。

2018年10月23日