010.武富士(事例紹介)

① オランダ会社(武富士の株式保有)の株式贈与
消費者金融の武富士の創業者武井保雄元会長夫妻が、1999年に武富士の株式を保有するオランダの会社の株を長男に贈与した。

② ポイント:受贈者(長男)の生活の本拠
長男は武富士と香港の子会社の役員となっていて、日常的に日本と香港を行き来していた。1997年から2000年で、およそ3分の2は香港で生活し、香港の子会社の実務も行っていた。それ自体仮装されたものではない。
一方で日本の武富士での職業活動が拠点となっていたことも事実であった。

③ 税制の取扱い
当時の税法によれば非居住者が国外財産の贈与を受けた場合、贈与税はかからないこととなっていた。

④ 国税当局の対応
 この香港への移住は租税回避(贈与税の回避)を目的としたものであって、香港に滞在していたものの生活の本拠は日本にあったと主張し、2005.3に1157億の贈与税の賦課決定処分。

⑤ 判決
第一審  2007.5  納税者勝訴
第二審  2008.1  国勝訴
最高裁  2011.2  納税者勝訴

⑥ 税制改正の対応
海外居住者であっても日本国籍を有する一定の者については、国外財産を贈与や相続で取得した場合、課税されることとなった。

2017年8月7日