054.役員退職金について

 役員退職金は、支払う法人で基本的には損金算入が可能であり、退職金の支給をうける
個人側は優遇税制となっているため高額になりがちで、課税庁から「不相当に高額」とし
て否認されることがあります。
 適正額と認められる役員退職金を超える金額は過大役員給与として損金不算入となるた
め、役員退職金の算定にあたっては注意を払う必要があります。

 役員退職給与の算定方法については、その算定基準は一般的に次の2つのいずれかと⾔
われています。これらの⽅法は特に法的根拠はありませんが、過去の裁判でも⽤いられて
いることもあり、課税庁もこれらの⽅式(特に平均功績倍率法)で適正退職⾦を認定する
場合が多いようです。

1. 平均功績倍率法
 退職役員に退職給与を⽀給した当該法⼈と同種の事業を営み、かつ、その事業規模が類
似する法⼈の役員給与の⽀給事例における功績倍率(同業種・同規模法⼈の役員退職給与
の額を、その退職役員の最終⽉額報酬に勤続年数を乗じた額で除して得た倍率)の平均値
(平均功績倍率)に、当該退職役員の最終⽉額報酬及び勤続年数を乗じて算定する⽅法
   最終月額報酬× 勤続年数 ×平均功績倍率

2. 1年当たり平均額法
 同業種・同規模法⼈の役員退職給与の⽀給事例における役員退職給与の額を、その退職役
員の勤続年数で除して得た額の平均額に、当該退職役員の勤続年数を乗じて算定する⽅法
   Ⓐ × 勤続年数 
   Ⓐ:同業種・同規模法⼈の1年あたり退職金額の合計額÷同業種・同規模法⼈の数

 会社側が自社と同業種・同規模法⼈の役員退職給与の事例を見つけだすことは、実務的
に困難ですし、役員の月額報酬と勤続年数だけをもって算定していいのかという問題もあ
ります。
 その役員が創業者であるかどうか、退職の事情や会社への貢献度なども加味して、合理
的に説明し得るかどうかが問題となると思われます。

 退職直前に役員報酬月額を極端に増額させて、平均功績倍率法を適用させた場合などは、
過大役員給与として否認されるリスクが高いため、慎むべきでしょう。

2020年12月26日