051.生産緑地の2022年問題

 現行の生産緑地法が平成4年(1992年)に施行となり、三大都市圏の市街化区域において農業を営んでいた多くの農家の方が自分の農地を生産緑地に指定申請を行いました。現在ある生産緑地の多くは1992年に指定をうけた農地といわれています。

 生産緑地となりますと固定資産税は純農地課税となり、またその所有者に相続が発生した場合は納税猶予の申請が可能となります。
 ただし、これらの税金の優遇措置がある代わりに、一度、生産緑地指定をされるとその土地を農地として管理し続けなければならず、売却することや住宅用地として活用することに制限がかかります。

 ただし、次のような事由が生じた場合、その制限を解除する機会が訪れます。
  1.生産緑地指定から30年経過
  2.主たる農業従事者の死亡
  3.主たる農業従事者の農林漁業に従事することが出来ない故障

 上記1.に該当した場合、その所有者には以下の様な選択肢があります。
  (1)  そのまま生産緑地指定を継続する
  (2) 特定生産緑地指定を受ける
  (3) 市町村へ買取を申し出る

 なお、(3)の買取の申出を受けた市町村の対応は以下のようになります。
  ① 市長村が買い取る
  ② 市町村が買い取らない場合は、他の農業従事者に斡旋する
  ③ ①②が成立しない場合は、生産緑地の指定を解除する

 つまり、生産緑地指定を受けた農地は市町村への買い取りの申出が不成立となって初めて、所有者が任意に使用・売却が可能となります。

 また上記(3)を選択した場合、今まで受けていた税金の優遇措置が解除されるので注意が必要です。

 さて、1992年に指定を受けた生産緑地が30年を経過し、指定解除となる2022年がまもなく近づいてきます。

 買取の申出を行った場合、①②が成立することはまれで、多くは③の生産緑地の指定解除がされると言われています。この場合、農地を自由に活用することが可能となりますので、農地が一斉に宅地化される可能性があります。
 この結果、農地から転用した宅地の供給過多による不動産価格の下落、環境悪化等が懸念されています。これが「生産緑地の2022年問題」と言われているものです。

 2022年を迎えるにあたって前述しました農家側の対応(1)(2)(3)を整理しますと以下の通りとなります。

 (1)生産緑地の指定を解除せず、引き続き農業経営を続ける
  この場合は30年経過以降はいつでも買取りの申出をすることができます。
 しかし、固定資産税の優遇措置はなくなり段階的に宅地並み課税となります。
 また、相続税の納税猶予を受けている場合は、現世代の納税のみ猶予され、その
 次の世代には納税猶予はありません。

 (2)新たに新設された「特定生産緑地」の指定をうける
  法律の改正により新たに「特定生産緑地制度」が定められました。特定生産緑地
 として10年間、引き続いて農業を経営していくことになります。
  特定生産緑地の指定を受けると10年間経過するまで固定資産税は従来通り純農地
 課税による低い課税です。相続税の納税猶予も従来通り後継者が農業を継続するこ
 とにより納税猶予が可能です。
  また10年経過する直前に再延長するかどうかを選択することができます。

 (3)市町村へ買取の申出を行い指定解除をする
  農地以外の転用が可能となりますが、以後固定資産税は宅地並み課税となり、
 また、相続税の納税猶予を受けている場合は、猶予分の相続税と利子税を納付する
 ことになります。

2020年9月23日