グループ法人税制について

すでにご案内のとおり、税制改正大綱にもとづく、グループ法人税制がH22.10.1以降の取引について適用されることになりました。改めてグループ法人税制の内容について、簡単にご説明いたします。

(1) グループ法人税制の意味
 主に下記の2点から導入が図られたといわれています。
① 大会社のみならず中小会社においてもグループ経営があたりまえのようになり、100%子会社の設立・買収がおこなわれてきています。これらのグループ法人は一体として活動しており、A社からB社に資産の移転があった際に課税が生じるのが企業運営に不都合なケースがあります。
② グループ内において、不動産等の含み損失を実現化するために、譲渡が行われる場合もあり、過度の節税等を抑制させたいという当局の意向があります。

(2) 税制の概要
 次のような取扱いが定められました。
① 完全支配関係がある内国法人間で「譲渡損益調整資産」について譲渡があった場合には、譲渡法人において譲渡利益額又は譲渡損失額が繰り延べられます。(4)で簡単に解説。
② 完全支配関係がある内国法人間での寄附金については、支出法人においてその全額が損金不算入となり、受領法人においてその全額が益金不算入となります。
③ 完全支配関係がある内国法人間での現物分配(法人がその株主等に剰余金の配当等の事由により金銭以外の資産の交付をすることをいいます。)に適格概念が導入され、適格現物分配の直前の帳簿価額により資産を移転することができるようになります。
④ 完全子法人株式等について受ける配当等の額については、負債の利子を控除せず、その全額が益金不算入とされます。
⑤ 資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上である法人又は相互会社等との間にこれらの法人による完全支配関係がある法人については、中小法人等に認められている軽減税率等のいわゆる「中小特例制度」の適用が認められなくなります。
⑥ 完全支配関係がある内国法人間で自己株式を売買した場合、譲渡損益は生じないことになります。
⑦ 完全支配関係がある内国法人の残余財産が確定した場合、適格合併の場合と同様にその欠損金を株主等に引継ぐことになります。

(3) 適用法人
 グループ法人税制は、100%グループ内(完全支配関係のある)法人を対象とします。
 この場合の完全支配関係とは、一の者が法人の発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係(当事者間の完全支配関係)又は一の者との間に当事者間の完全支配関係がある法人相互の関係をいう。
 一の者が個人である場合には、その者とその親族等が含まれます。

[イメージ図]
グループ法人税イメージ図

(4) グループ法人間の資産の譲渡等
 譲渡損益調整資産をグループ法人に譲渡した場合、譲渡利益・譲渡損失は、所得の金額計算上、損金の額・益金の額に算入することとされています。
① 譲渡損益調整資産
固定資産・棚卸資産たる土地・有価証券(除 売買目的有価証券)・金銭債権及び繰延資産 (譲渡直前簿価が1000万未満の資産を除く)
② 減価償却資産等
譲渡法人 簿価100を110で売却して、10の利益
譲受法人 取得価額110 減価償却 110を対象に行う。

譲渡法人の税務処理
・ (会計)譲渡益 10・・・ (申告調整)損金算入10
・ 譲受法人の減価償却費に対応する金額・・益金算入
(原則法) 10 × 償却費の額 / 110 
 

2010年9月7日