従業者が提供を拒んだ場合の対応

マイナンバーについて                   
従業員等が個人番号の提供を拒否した場合の対応

2016年よりマイナンバー制度が始まります。
顧問先の皆様におかれましては、マイナンバー制度の概要を従業者に説明し、また個人番号の利用目的を明示し、従業者等から個人番号の取得を促している段階であると思います。

ただし、従業者等の皆様のなかには、まったく新しい制度の発足にともなう漠とした不安、また詐欺事件の報道などもあり、会社への提出を拒んでいる方もあると聞いています。

提出を拒否されている従業者の方に対して、会社側が強固に提出を強要しても、かえってモラル低下がおこり、生産性が落ちることも懸念されますので、今回につきましては、「経過」の記録を残すに留め、世間全般におけるマイナンバー制度についての周知をまって、2016年末に再度取得の勧奨を行えばどうかと考えております。

背景となる法的根拠
〇「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(いわゆる番号法)
第19条 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報の提供をしてはならない。
1. 個人番号利用事務実施者が個人番号利用事務を処理するために必要な限度で本人若しくはその代理人又は個人番号関係事務実施者に対し特定個人情報を提供するとき。
2. 個人番号関係事務実施者が個人番号関係事務を処理するために必要な限度で特定個人情報を提供するとき(第十号に規定する場合を除く。)。

法律自体も特定個人情報について限定的な取得にアクセントを置いた条文となっているため、「会社が従業者より個人番号を取得しなければならない」というような規定ではなく、19条2項で、個人番号関係事務実施者(会社)が個人番号関係事務(源泉徴収票に個人番号を記載して行政に報告する事務など)を処理する場合に必要な限度で、従業者が会社に特定個人情報の提供を行う、という分かりにくい規程となっています。

〇 内閣官房によるマイナンバーのHPの「マイナンバーのよくある質問(FAQ)・(4)民間事業者における取扱いに関する質問」には次にように記載されています。

Q4-1-1 民間事業者もマイナンバー(個人番号)を取り扱うのですか?
A4-1-1 民間事業者でも、従業員やその扶養家族のマイナンバーを取得し、給与所得の源泉徴収票や社会保険の被保険者資格取得届などに記載して、行政機関などに提出する必要があります。また、証券会社や保険会社が作成する支払調書、原稿料の支払調書などにもマイナンバーを記載する必要があります。(2014年6月回答)

〇 従業員等がマイナンバーの提供を拒んだ場合の対応について、同HPに次の記載があります。

Q4-2-5 税や社会保障の関係書類へのマイナンバー(個人番号)の記載にあたり、事業者は従業員等からマイナンバーを取得する必要がありますが、その際、従業員等がマイナンバーの提供を拒んだ場合、どうすればいいですか?
A4-2-5 社会保障や税の決められた書類にマイナンバーを記載することは、法令で定められた義務であることを周知し、提供を求めてください。それでも提供を受けられないときは、書類の提出先の機関の指示に従ってください。

 国税庁の「国税分野のFAQ」には以下のとおり記載されています。

Q2‐10 従業員や講演料等の支払先等から個人番号の提供を受けられない場合、どのように対応すればいいですか。

(答)
法定調書作成などに際し、個人番号の提供を受けられない場合でも、安易に個人番号を記載しないで書類を提出せず、個人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務であることを伝え、提供を求めてください。
それでもなお、提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください。
経過等の記録がなければ、個人番号の提供を受けていないのか、あるいは提供を受けたのに紛失したのかが判別できません。特定個人情報保護の観点からも、経過等の記録をお願いします。
なお、法定調書などの記載対象となっている方全てが個人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号を記載することはできませんので、個人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません。

2015年12月2日