相続時精算課税

相続精算課税は内容が複雑で、どんな場合にメリットがあり、デメリットがあるか、よく検討してから選択してください。

<贈与の種類>
贈与税には、暦年課税と相続時精算課税の2種類があり、一定の要件に該当する場合は相続時精算課税を選択できます。

<暦年課税>
暦年課税は毎年110万円までは申告不要・贈与税がかかりませんし、原則として毎年課税関係が完結していきます。また、贈与者と受贈者の関係を問いません。

<相続時精算課税の考え方>
一方、相続時精算課税を選択して贈与を受けた場合には相続発生までを一つの贈与とみなして贈与税を納めます。贈与者が亡くなった際には、贈与財産を含めて相続税を計算し、この相続税といったん支払っていた贈与税との差額を支払う(もしくは還付を受ける)ことになります。相続時精算課税を選択して支払った贈与税は、言い換えれば相続税の仮払いのようなものです。

<相続時精算課税における、贈与者と受贈者の条件>
暦年課税は、贈与者と受贈者の関係を問わないのに対して、相続時精算課税では、贈与者は60歳以上の親または祖父母、受贈者は贈与者の推定相続人である20歳以上の子または孫と限定されています。
また贈与者ごとに適用できるため、例えば父からは暦年課税、母からは相続時精算課税とすることもできます。贈与財産が一定の要件を満たす住宅取得資金の場合には、贈与者の年齢の制限はありません。これを相続時精算課税選択の特例と言い、平成31年6月30日までに延長されました。

<相続時精算課税と暦年課税の選択>
相続時精算課税を選択した場合は、それ以降のその贈与者からの贈与は暦年課税を適用できません(暦年課税に戻せない)。

<相続精算課税の申告>
贈与を受けた年度は毎年申告が必要
スタートから2500万円までは贈与税なしで贈与が可能
2500万円までの贈与には贈与税がかからず、2500万円を超える部分に20%の贈与税が課されます。贈与財産の種類、金額、贈与回数、年数に制限はありません。

<相続が発生したときに「精算」する>
贈与者の相続時は、相続時精算課税での贈与財産を加算して相続税を計算し、この相続税といったん支払っていた贈与税との差額を支払います(還付を受けることもあります)。

<相続時精算課税のメリット>
①一度に多額の贈与ができる
2500万円までは贈与税がかかりません。2500万円超は一律20%の贈与税がかかります。
②財産移転がスムーズにできる
相続税で再計算されるため相続税の節税対策にはなりませんが、早期に多額の財産を移転できます。
③収益物件の贈与なら相続税対策につながる
収益物件の贈与であれば贈与後の収益は受贈者のものとなるため、贈与者の財産(収益分)が増えないことで間接的な相続税対策になる。
④値上がりする見込みの財産を贈与するには有利
贈与時の金額が相続時に加算されるため、将来的に値上がりが見込まれる財産の贈与であれば、値上がり分の相続税は回避できることになります。たとえば自社株など。
⑤分けにくい財産でも生前に移転が可能
相続時に遺産分割協議が難しい財産も生前に移転できます。ただし、贈与財産は遺産分割の対象にならないが特別受益にはなるので注意。

<相続税精算課税のデメリット>
①一定の直系親族間の贈与に限られ、かつ年齢制限がある
②金額にかかわらず贈与税の申告が必要
③贈与財産は相続時に小規模宅地等の特例が受けられない
小規模宅地減額の対象となる不動産は「贈与」としないなどの対応
④贈与財産は相続時に物納できない
⑤その贈与者からの贈与は暦年課税に戻せない
⑥不動産の贈与の場合、移転コストが高い
相続であれば登録免許税0.4%のみですが、贈与の場合は登録免許税は2.0%となり、また別に不動産取得税もかかります。

2018年1月29日