贈与(一般贈与)

相続税対策の王道ともいえる方法です。
毎年継続的に贈与を行うことで、相続財産額を確実に下げることができます。
ただし、後述する名義預金等の問題もありますので、行うにあたってはやはり慎重に行ってください。

1.贈与とは
贈与とは、簡単にいうとある人が別の人に無償で自分の財産をあげることです。
贈与者が「あげます」と意思表示をし、さらに、受贈者が「もらいます」と意思表示をすることで、贈与が成立します。
すなわち、贈与者と受贈者の両方の意思が必要となる法律行為です。

たとえば、まだ1歳の孫に「お金をあげる」と言ってお金をあげたとしても、1歳の子はお金をもらうという意思表示ができません(契約の当事者として不適格)ので、これだけでは贈与にはなりません。

贈与という行為(双方の意思の確認)を明確にするためには、書面で贈与契約書を作成するなどを行うのが一般的です。先に例では、1歳の子供の親が法定代理人となるなどして、契約を行う必要があります。

2.贈与税
もらった側の税金はどうなるでしょうか?

贈与税には基礎控除という免税枠があり、贈与で取得した金額が110万円までであれば贈与税はかかりません。
【一般贈与財産用】(一般税率)
「特例贈与財産用」に該当しない場合の贈与税の計算に使用します。
例えば、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに使用します。

基礎控除後の課税価格※ 税 率 控 除 額
~200万円以下 10%
200万円超~300万円以下 15% 10万円
300万円超~400万円以下 20% 25万円
400万円超~600万円以下 30% 65万円
600万円超~1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超~1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超~3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超~ 55% 400万円

【特例贈与財産用】(特例税率)
直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日時点で20歳以上の子・孫などへの贈与に係る贈与税の計算に使用します。
例えば、祖父から孫への贈与、父から子への贈与などに使用します。

基礎控除後の課税価格※ 税 率 控 除 額
~200万円以下 10%
200万円超~400万円以下 15% 10万円
400万円超~600万円以下 20% 30万円
600万円超~1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超~1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超~3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超~4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超~ 55% 640万円

※「基礎控除後の課税価格」とは、贈与額から基礎控除額(110万円)を差し引いた後の金額です。

3.相続税と贈与税
相続税と贈与税は、相続税法という1つの法律の中で定められています。これは、相続税と贈与税は、セットとして運用されているためです。

相続税があって贈与税がなければ、財産を全て生前贈与してしまえば税金(相続税)が発生しなくなるため、そういう意味で贈与税は相続税の補完する意味をもっています。

日本の相続税では、相続開始前3年以内に贈与した財産については相続税の対象にすることになっています。
相続(遺贈を含む)により財産を取得した人で、相続開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得した場合には、その相続人の相続財産に贈与より取得した財産が加算されます。加算される金額は、贈与された時のその当時の相続税評価額です。
そして、その財産を取得した時に贈与税を払っていればその贈与税額をその人の相続税額から控除します。

4.贈与と名義預金
贈与のなかでも現金の贈与が簡単な方法であることから、贈与税の基礎控除の範囲内で毎年贈与を行うケースがあります。
贈与証書も作成し預金名義は移動させる、しかし、通帳は渡さず預金管理は贈与者が行っているような場合、これは贈与といえるでしょうか。表面上、贈与を行っただけで、実質的に贈与が行われていない、そう判断されるのが名義預金問題です。
このような預金を相続財産から外して申告した場合であっても、名義預金と判断されますと、相続人の財産として相続税の計算がなされてしまいます。

相続の税務調査において、名義預金が一番の争いとなります。

2017年12月11日