土曜日に書店によって新刊コーナをみていて、「うつ病九段 先崎学」という本を買う。
棋士、先崎がうつ病を発病して、頭のなかにコールタールを塗りこめられたようなうどん底の状態から、徐々に回復する過程を時系列におっての体験談である。
先崎の実兄が精神科の医師であり、初期症状からすぐに入院の手配をうけたり、回復期に散歩を奨励して、「医者や薬は助けくれるだけなんだ。自分自身がうつ病を治すんだ。大自然をとりこむことがうつを治す力である」などのアドバイス、ラインで毎日のように「必ず治ります」と短いメッセージが送られてきたなど、ある意味幸福な環境下での闘病記である。
そして、彼の属していた仕事仲間でもあるプロ棋士たちとの交流が彼を救っていく。とりわけ彼を敬愛する後輩たちの言動が、彼を勇気づけていく様子は読んでいても感動的である。
自分がまだ「価値」のある存在であること、尊敬されていること、後輩からのその言動が彼を勇気づけ、この仕事を続けていきたいという信念がうつを克服していく原動力となっている。
うつ病とは心の病ではなく脳の病であり、したがってだれにでも発症する可能性があるという。私がうつになったとして、うつを克服する支えや原動力が自分にあるだろうかとの思いを持ちながら読み終えた。