善意の空席

 先日仕事で移動中の電車でのこと。座席は詰まっており、立っている人も相当数いるなかで、停車した駅で初老の男性が乗ってきた。つと、座席に座っている女性がたちあがり、どうぞと席を譲ったのである。ところが、男性の方は「いえ、結構です」といって座ろうとしない。譲った方は、どうぞ、どうぞと数回すすめるが、男性の方は頑なに「いえ、結構」といい、ついには、別の場所に移動してしまった。
 譲った方もバツが悪いのか、もとの席に座ることもなくそのままつり革につかまり、周囲の乗客も妙な空気感で動けず、次の駅までポッカリと空席が残されたのである。

投稿者:春田 健2014年12月20日