スポーツの世界でも戦略は存在するが、戦前の予想通りにはいかないのが常です。この事から考えれば、ビジネスが戦略通りに行かないのは、当然のことと言えます。単純で、かつ明確なルールのあるスポーツに比べて、ビジネスの世界は「何でもあり」で、相手は何をしてくるかわからない、環境が一変する、需要予測などあてにならない、わからないことだらけです。ところが、戦略策定が重視され、コンサルタントやMBAが様々な分析やフレームワークを駆使した戦略で勝負が決まると錯覚している経営者は多く、この勘違いは経営学の本やビジネス書が原因です。そこには、成功した企業が取り上げられ、経営者がその戦略について語っており、あたかもすべて事前の戦略や計画、またアイデアによって成功したように述べています。成功した経営者は、インタビューや講演の機会が多く、そのなかで自分なりのストーリーを創り上げていき、「勝てば官軍」で、後付の戦略でも、それが事前に策定されていたかのように語ると推測します。
チャートの横軸は、「実践は計画であったか?」、「創発的であったか?」。縦軸は、「戦略は成功したか?」、「戦略は失敗したか?」。創発的とは戦略を実行していく中で生まれた新たな戦略の事です。このチャートに基づいて調査があり、経営者の答えは、それぞれの象限が、25%ずつになった。つまり、横軸の計画的か創発的かはそれぞれ50%、縦軸の成功か失敗もそれぞれ50%になったということで、事前の戦略がそのまま成功したのが25%で、実行中に練り直した戦略で残りの25%の成功を導いたことが分かります。
戦略を実行に移すと、想定外の環境変化や競合の対抗策があり、また顧客の反応が予想通りに行かないことも多い。そのような事態に反応して、実行前の戦略を積極的に、変容させていく必要があります。つまり、どんな優秀なコンサルタントやマーケッターでも、需要予測や競合企業の動向を見通して、完璧な戦略を策定することはできません。従って、その策定された戦略が成功するかどうかは、組織能力として、トップと現場が戦略と実績とのズレをうまく修正する擦り合わせ能力が求められます。
戦略は仮説!やってみなければ分かりません!