林原 同族経営の破綻

 岡山の有力企業、林原が会社更生法を申請したが2011年である。その後、2013年に同社の専務であった林原靖氏の「破綻」、そして先月社長であった林原健氏が「林原家 同族経営への警鐘」と経営者2人が破綻に至る経緯を記述した2冊の本が刊行され読み比べると興味深い。

「破綻」は、メイン銀行であった中国銀行、住友信託銀行の不誠実な対応(自社の債権保全を優先させるばかり)と、当初の事業再生ADRから会社更生法に至る顛末が、ほとんど実名をあげて記載されている。自社の粉飾決算を棚にあげていることの勝手さを除くと、事業会社側からみたドキュメント風で、巨額の借入により資金繰りを行っている会社が、いったん銀行等に見放された場合、様々に翻弄されながら破綻するまで一気に押し流されしまう様子がよく描かれている。
 余談ですが、この本の読了後すぐ位に中国銀行に勤務している人とゴルフにいく機会があったのですが、彼もこの本を読んでいてひどく憤慨しておりました。自社の粉飾決算に対する反省のようなものが欠けていているというのです。(正直どっちもどっちという感じもしますが)

 一方「林原家 同族経営への警鐘」によると、林原の経営は社長が研究開発と会社経営方針全般を行い、弟である林原靖氏が営業、管理部門全般を統括して、相互に相手の領域に口を差し入れることは一切なかったという。兄弟が経営のトップにたっていることの怖さ、兄弟であるがゆえに相互の担当分野に口出しをしない、あるいはできないために、経営が破綻していく様子がこちらも家族等の実名をあげて描かれている。

 私の顧客の大半が同族法人でありますし、読んでいて改めて経営は人間の営みであることの危うさを教えられたような気がしました。

 それにしても、最近実名の記載された本が次々に出版されているのですが、これはこれで問題ないのでしょうかね?

投稿者:春田 健2014年6月11日