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久遠寺でのこと
久遠寺でのこと
前回、久遠寺のことを書きました。その際、女房の亡くなった父親が日蓮宗であるし、せっかくの機会なので塔婆供養をお願いした。その日は、あと2人の女性が供養をお願いしており、広いお堂のなかで3組が5人ほどのお坊様により、丁寧な回向がなされた。
30~40分ほどの回向が行われ、お坊様が退席されたあと、さてと腰をあげたところ、一緒におられた女性のうちの一人が、供養されていた塔婆の前に寄られて、塔婆を手で撫でつけ、嗚咽をもらし始めたのである。故人がだれなのか知る由もないが、まるで塔婆がその人であるかのように、抱きしめんばかりにして、静かに泣いている初老の女性。
霊山の契り、という言葉を思いおこしながら、私はしばらく動くことができなかった。
投稿者:春田 健
2020年6月18日
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