M&A活況なり

一昨年から、M&Aに関する話がある。
一昨年はクライアント(売手)で巨額のディールが成立してそのプロセスに立ちあった。まずは、お客様サイドのFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の選定作業から始まる。その選ばれたFAからの会社の財務に関しての質問と資料作成依頼、FAから提案された売却スキームについてクライアントとの検討、次に、選ばれた買収先会社のFAよりの税務・会計処理について何百もの質問に対応する。最後に契約書の締結と売買資金の移動。いや、すごい世界があるものだと驚いたものである。

昨年からはもう少し小型(対象会社の売上規模が1億円~20億円)のM&Aに携わるようになってきた。我々のお客様が売手であったり、買手であったり、両方の視点からM&Aが見えて興味深い。
改めて、会社の価値とはなにかということを考えさせられた一年でもあった。

また、M&Aというのは、売主、買主間のタイミングがある意味決定的に大事な要素であることもわかってきた。売り側にたつと、売却の決断は早期に(業績の上昇期に)すべきであるし、買手サイドにたつと、「買いたい」という気持ちが先行しすぎると評価が甘くなってしまうように思え、冷徹な判断が必要ではないかと。

我々の仕事として、買手側のデューデリジェンス(DD)の依頼を受けた折には、あらゆるリスク情報に感度を高くして臨む必要がある。預かった資料を読み込むのは相当の時間がかかるが、その手間を惜しむことはできない。実際の例として、買収先の取締役会の議事録を読んでいるうちに、とんでもない未解決事項の記載がありその部分を示して、会社側に釈明を求め、それが買収の最大のネックになっているということもある。(現在進行形ですが。)

一方、売手側のアドバイザーとなったときには、単に説明型のアドバイザーではなく、全体を俯瞰する鳥の眼をもつこと、また経営者の気持ちに寄り添うことも大切である。売主にとっては、長年経営してきた、あるいは親より相続した会社を売却する、そういう決断のなかに複雑な思いがあることは想像に難くないからである。

今しばらく、このM&Aの活況はつづくことだろう。我々のこの種のアドバイス業務は緒についたばかりである。
仕事の遣り甲斐もあるし、仕事のウイングを広げるという意味もある。また、考えてみるとこれは会計的な素養をベースとした我々の本来業務ともいえる。
骨のおれる仕事ではあるが、今年前向きに取り組んでいきたい。

投稿者:春田 健2020年1月7日